クラシック音楽を普及させる取り組み

(VOVWORLD) - 最近、ベトナムではクラシック音楽の愛好家がお茶を飲みながらクラシック音楽の生演奏を楽しめる場所ができました。これは、クラシック音楽を普及させる取り組みの一つです。

何世紀にもわたって、クラシック音楽というと、豪華なシャンデリアや赤いベルベットの座席を備えた大劇場のイメージが連想されてきました。ウィーン国立歌劇場、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホール、ハノイのオペラハウスなどがその例です。しかし、最近、ベトナムではクラシック音楽の愛好家がお茶を飲みながらクラシック音楽の生演奏を楽しめる場所ができました。これは、クラシック音楽を普及させる取り組みの一つです。

クラシック音楽を普及させる取り組み - ảnh 1(マグカップのシューベルト)の枠内で行われた「荷物のない旅」という第30回コンサート

(現場の音)

お聴きいただいている曲は、フランスの作曲家リリ・ブーランジェの作品「ヴァイオリンとピアノのための2つの小品」で、クラシック音楽の普及を目指すプロジェクト「Schubert in a Mug」(日本語に訳すと、マグカップのシューベルト)の枠内で最近ハノイで行われたコンサートの幕開けとなりました。このプロジェクトは、大劇場ではなく、カフェなどのような小さな空間でクラシック音楽を披露することを通じて、クラシック音楽を市民に近づけて馴染みのあるモノにすることが狙いです。

プロジェクトの創設者であるチェリストのファン・ド・フックさんによりますと、彼にとってクラシック音楽を披露するとき、観客との距離は非常に重要で、居心地が良く、観客との距離も近いという場所で演奏することは最高ですね。客席からわずか1メートル離れたところに座ると、とてもエネルギーを感じることが常だとのことです。フックさんの話です。

(テープ)

「私の単純な願いは、誰かのために音楽を演奏するということです。劇場で数百人の前で演奏するよりも、5人ぐらいの人の前で音楽を演奏したいのです。その方がみん真剣に聴いてくれます。この願を実現するためにどうすればいいのか考えたときに、ハノイの独特なコーヒー文化のことを突如、思い出しました。ハノイには素敵なカフェもたくさんあるので、数人の友達と相談しました。幸いなことに、彼らは皆、観客との近い距離を持つ居心地の良い空間で音楽を演奏するという同じインスピレーションを共有してくれました。これにより、2020年8月に『マグカップのシューベルト』というプロジェクトが誕生しました」

プロジェクトの名について、フックさんは、オーストリアの作曲家シューベルトの音楽は自分にとって幼い頃から馴染みのあるもので、プロジェクトの精神とシューベルトの演奏スタイルにも一定の調和があるとしています。そして、マグカップはカフェでよく使われるカップで、「マグカップのシューベルト」はカフェでのクラシック音楽という意味です。フックさんは次のように語りました。

(テープ)

「シューベルトは大きなコンサートホールで演奏することがほとんどないアーティストでした。彼はよく自宅に友人を招待し、一緒に音楽を演奏したり、新しい作品があるときは音楽について話しあったりしました。とても親密で暖かかったのです。それがシューベルトの精神であり、彼の人生でもありました」

クラシック音楽を普及させる取り組み - ảnh 2チェリストのファン・ド・フックさん(右)

プロジェクト「マグカップのシューベルト」では、コンサートのほか、アーティストと観客との交流も行われます。居心地の良い空間で、クラシック音楽についての愛、好奇心、ストーリーなどが親密で暖かい雰囲気の中で自然に語られます。プロジェクトに参加しているアーティストは、チェロ奏者ファン・ドー・フックさんのほか、ピアニスト ホアン・ホー・トゥーさん、オーボエ奏者ホアン・マイン・ラムさん、台湾出身のピアニストリアオ・シンチャオさん、ヴァイオリニストホアン・ホー・カイン・ヴァンさん、クラリネット奏者のチャン・カイン・クアンさんの合計6人で、彼らはクラシック音楽の有望なアーティストであると評価されています。

コンサートでは、アーティストはシンプルな服装に身を包み、世界中のさまざまな作曲家のクラシック作品を演奏します。観客は年齢も職業もさまざまですが、みんな距離感を感じさせません。プロジェクトのコンサートを毎月定期的に楽しむチュオン・ヌ・ホアン・ザンさんは次のように語りました。

(テープ)

「私はクラシック音楽を聴いていますが、通常は『ペルシャの市場にて』や『月光ソナタ』など、ベトナムでは非常になじみのある音楽ばかりです。このプロジェクトのコンサートを聴いてからとても気に入っているのは、必ずその作品の紹介があり、クラシック音楽について詳しく語られるので、より理解が深まり、さらに音楽が好きになりました。プロジェクトは、新しい作品を紹介してくれる音楽の家庭教師のようなもので、何度も聴きたくなるものです」

同プロジェクトはこれまで、さまざまな規模と形態のコンサートを30回以上開催してきました。カフェ、ティールームから芸術センターまで中小規模のスペースでのライブパフォーマンスのほか、新型コロナ禍でのオンラインコンサートもありました。

コンサートの後、観客には感想やアーティストへの質問を記入するための投票用紙が渡されます。オランダから来たKoosNeefjesさんは次のように語りました。

(テープ)

「アーティストが演奏した作品を紹介するやり方が好きで、音楽に対する愛と真剣さがはっきりと伝わってきました。例えば、今日ある曲の歌詞を受け取りましたが、歌われていなくても、観客の私たちにはその意味が理解できました。家や携帯電話、劇場でクラシック音楽を聴くのとはまったく違います」

(現場の音)

プロジェクト「マグカップのシューベルト」は4年目に入りました。これからは、高い専門資格を持つ外国のアーティストをベトナムに招いて公演を行う計画があります。同プロジェクトのアーティストらは、ハノイ郊外、特に遠隔地で近いうちに無料コンサートを開催したいと考えています。アートがよりポジティブに広がるためには社会の発展に貢献すべきであると信じているのです。

ご感想

主田 靖彦

興味深い記事でした。7/9~13にハノイに行きます。「マグカップのシューベルト」やこれに類した演奏会に行きたいです。

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